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ボンネットバスのお話 5

 先ほどまでたくさんの子供達で埋まっていた広場は、あっという間に元の通り静かになりました。
 ただ、白い時計塔だけがゆっくりと時を戻しています。
 「さぁ、お前もよくがんばったな」そう言っておじいさんはバスの鼻っつらをオレンジ色のタオルで拭いてくれました。そして、やさしく窓を拭き、ミラーを拭き、タイヤのドロを落とし、山道をフラフラになって走り抜けたバスをきれいにしてくれました。
 そしておじいさんはバスの中に乗り込みシートにふらりと横たわったかと思うとすぐに寝息をたてて寝てしまいました。
 いつの間にかバスも、すぅ、、と寝てしまいました。
バスは夢を見ました。きらきらと目を輝かせ、嬉しそうに笑っている子供達を乗せて、緑の街路樹のなかをさっそうと駆け抜けている夢です。
空はどこまでも高く青く透き通っていました。
 どれくらいの時間そんな幸せな夢を見たでしょう。いつの間にか広場の中は朝の光で黄金色に満たされています。
おじいさんは固くなった体を思いっきり伸ばすように両手を空に向かって広げました。「あぁ、気持ちのいい朝だねぇ。ほら、木陰の向こうでお日様が踊っているよ。ああ、本当にこんなに美しい朝をむかえられて、あぁ、本当に幸せな事だ。」そうつぶやいたおじいさんでしたが、バスの目にはその時のおじいさんの顔がほんの一瞬こわばっているかのように見えました。
そして、「さぁ、今からむかう所は少々大変かもしれないが辛抱しておくれよね」そう言ったかと思うとおじいさんは運転席に乗り込み、内ポケットからタバコを取り出し火をつけました。
「ふぅー」と吐き出した煙は窓の向こうでふわふわ踊りながら風と一緒に行ってしまいました。
ぶるるん、ぶるるん、エンジンが調子のいい音をたてています。さぁ、出発です。
バスは(今度はどんな所にいくんだろう?大変だなんて言っていたけど、だけど、ボクはこのおじいさんと一緒ならきっとまた幸せな夢を見られるかもしれない。だからどんな道でもきっと走っていくんだ。)と、考えました。
 昨夜走った道はうそのように明るく、そして広いようでした。(ボクは本当にこの道を通ってきたのだろうか?)と少し不思議に思いましたが、お日様が照らし出す山道は、いろいろな鳥の声や木から立ち上る香り、キラキラとひるがえる葉に彩られて、とても穏やかな気持ちになるのでした。
しばらくそんな山道を走って行くと、今度は大きな道路にあたりました。その道はどうやら町へと続く道のようでしたが、バスにとっては見慣れない風景でしたし、第一、こんな道があったとは聞いた事がありません。
道の両側にバスの背丈よりも高いフェンスが張り巡らされていて、その一番上には鉄条網がぐるぐる巻きになっています。そのものものしい壁は見える限りどこまでも続いているようでした。
そのうち、少しずつ建物が見えてきて、人の気配がしてきた頃には、(そろそろ町に近づいたんだな)という事が判りました。
道路に立ててある標識や看板も増えてきたからです。
しかし、そのどれもがバスにとっては初めて目にする文字でした。そして、フェンスに向かって右側には、褐色の地に不思議な文字が書かれていて、どの看板も褐色です。また、向かって左側には白地に、それもやはり右側の物とは違いますが、見た事のない文字が書かれていました。
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ボンネットバスのお話 4

 おじいさんがハンドルをするするっとなでると、驚いた事にさっきまでガチャガチャした街の中に居たバスはいつの間にか真っ暗な山道を走っているのでした。
真っ黒い腕をどこまでも広げて覆い被さる木々、どこからか聞こえるフクロウや野犬の声、月の無い空には雲が広がりにぎやかな星たちも今日はしんみりとしています。バスはおっかなびっくりでその山道を登っていきました。
いったいどれくらい高く登ったのでしょう。だんだん細くなっていった道は、とうとう人間の子供が一人通れるか通れないかくらいになってきました。けれど不思議な事にそれでもバスはその道を進む事ができたのです。そしてしまいには、どこが上だか下だかもわからなくなり、ぐるぐるぐるぐる目も回り、針の先ほどの道に吸い込まれるように進んでいきました。
 夢を見ているような気持ちで走っているとふいに『さあ、着いた』と、おじいさんの声が聞こえました。
 くらくらする頭をしっかりさせようと身体をぶるるんっとさせ、パッとライトで照らした先を見るとそこには石畳が螺旋状にきっちり並べられた広場がありました。広場の真ん中に白い時計塔が立っていて、おかしな事にはその時計の針は時間を戻すかのように、反対に回っているのでした。その時計を取り囲むようにして、いろいろな形の笛やおもちゃを置いているテント、飲み物を置いているテント、わたあめやりんごあめが置いてあるテント、他にもわくわくするようなモノがたくさん並んでいました。
 おじいさんはバスを同じように並べ、なにやら準備を始めました。どこから取り出したのかまず、看板を立てました。そこには、クロスと、丸をみっつ合わせて、大きな三角形の中にはめこんである不思議なマークが書かれていました。
それから大きな土の鍋を出して、その横に木でできた長テーブルを置きました。テーブルの上に分厚いビンが並べられ、その中には赤、青、ピンク、オレンジ、、いろいろな色の細い棒が入っていました。
 『さて、、』と言って、そのビンの中からピンクの棒を取り出したおじいさんは、それを土のナベの中に入れてぐるぐるっと5回ほどかき混ぜました。すると、持ち上げた棒の先にピンポン玉くらいのまん丸なキャンディーが付いてきました。透き通っていて透明なようですが、よく見ると虹のようにいろんな色が見えてきて、時どき銀色に光るようにも見えました。
そんなふうにしてあっというまにいくつも出来上がったキャンディーを、長テーブルの上に次々と並べていきました。
 バスは何が起こっているのかよく解りませんでしたが、出来上がっていく不思議なキャンディーを見ていると、本当に幸せなような気分になってきて、疲れていた身体が軽くなってくるのでした。
 おじいさんはたくさんのキャンディーを並べ終えると、今度はバスの中に入って来ました。そしてイスに座ってじっと外を見つめ、優しい声で『さあ、どうぞ』と言いました。すると、今まで誰も居なかった広場にたくさんの子供達が突然姿を現しました。

ボンネットバスのお話 3

 (兄弟達はどこに行ってしまったんだろう、、)と、私達のボンネットバスはだんだん不安になってきました。今でもまだまだ元気に走っているのに、仲間が少ないと感じれば、それは不安にもなりましょう。
 そして、ある日の早朝『その時』は突然にやってきました。いつもの運転手さんが、例の新しいバスに乗って、そのままどこかへ行ってしまったのです。その代わりにボンネットバスの所へやってきたのは、グレーの作業服を着た大きな男でした。
 男と所長の話によると、昼間のうちに『スクラップ工場』という所に連れて行かれ、『スクラップ』にされるということでした。
 バスは『スクラップ』という言葉の意味など解りませんでしたが、なんとなく(いい話ではないのだろうな)という風に感じました。それでも、自分の意思ではどうにもならない事も解っていたので、男に運転されるがままスクラップ工場に向かいました。
 工場についた途端、バスは恐ろしい光景を目にしました。
なんと、顔なじみのたくさんの車や、機械がゴミのように潰され山積みになっていて、意地の悪そうなクレーン車が『まだ積めるぞ!もっともっと積めるぞ!』と言いながら、死んでしまった車達を積み上げていくのでした。
もうバスは怖いやらかなしいやら何だかよく解らなくなって、ぶるるんぶるるんと震えて、何もできないまま立ちつくしていたのでした。
 ガッチャーン バリバリ ギューン!、、、。連れてこられた車や機械達の最後の叫びの中で、いよいよ私達のバスの順番近づいてきました。
バスは神様に祈る事すら忘れて、ぼうぜんとただその時を待っていました。
 すると、そこに白髪の少し混ざった頭に上品そうなハンチング帽を被り、ピンと背筋の伸びた優しそうなおじいさんが現れ、どうやら工場長と何か相談事しているようでした。
そのうちにおじいさんは胸のポケットからいくらかのお札を出し、工場長に渡したようでした。工場長はいやらしそうにそのお札を数え、そして鼻で『ふんっ』と言ったかと思うと、おじいさんにカギを渡し、トタンでできた事務所に入って行きました。
 おじいさんは渡されたカギを大事そうに眺めてにっこり笑いました。そして私達のバスを見て『ほほぅ』と嬉しそうに声をあげました。
 そしてバスの方に近づいてきたかと思うと、バスの鼻先を嬉しそうになでて、すぐに運転席に乗り込みました。おじいさんは一言『さぁ、行こうか』と、言いました。

ボンネットバスのお話 2

ボンネットバスは1952年に大きな街のはずれにある、とても大きな自動車工場で産まれました。  人間ならうまれてすぐなんて一人でご飯すら食べられないのに、バスはもう走る事ができたそうです。  そんなだから一緒に産まれた兄弟達も、きゅるるんぶるんっと産声を上げたかと思うとすぐにそれぞれの仕事場に向かって行きました。
さて、、兄弟達がそれぞれどこへ行って何をしたかなんて話は、いくら鉛筆があっても書ききれませんから、今日のところは置いておきまして、、。
私達のボンネットバスは早速『路線バス』という仕事に就きました。街の中にあるバス停留所という所を決められた順番に回って、お客を乗せて運んだりする仕事です。
ピカピカの新しいバスは、お客に大人気でした。真新しいイスに座って、もの珍しそうにキョロキョロしている子供や、自分の足だと遠出も叶わなかったお年寄りが流れていく街の風景を楽しそうに眺めているのを見ては、バスは自分の仕事に誇りを持って働くようになりました。
それに、一日の仕事を終えて、運転手さんと二人きりで車庫に帰る時なんかは、賑わう夜の街を散歩しているような気分にさえなり、ウキウキするのでした。
また別の路線を走ったりするのも楽しみでした。いつも同じ場所だと誰だって飽きてしまいますがバスだって同じです。
自分が走っていた街の中を坂の上から眺めたりするのも気分が違って気持ちがいいものでした。
そうして何年も楽しく働いていたバスの目にある日奇妙な物が映りました。  なんだかつるんとしていて箱みたいに四角くて、やたら出っ張りのないおかしなバスでした。
ボンネットバスと同じように朱色のボディにクリーム色のラインなのですが、明らかにすっとした育ちの良さそうな顔をしています。,
ドアが開く時なんかもなんとなくスムーズな感じで、走っている姿も洗練された都会の紳士が新しいダンスを踊っているように見えました。
そんな最新モデルのバスがいつの間にか町中を走り回っている事に気がついた頃、ボンネットバスの兄弟達の姿はどこに行ってしまったのか、少しずつ見られなくなっていきました。

ボンネットバスのお話 1

私が幼い頃、家のすぐ側に『バスの店』がありました。
朱色のボディーにクリーム色のライン、黒の長靴タイヤを履いて、鼻っ面はカバみたいに前へ突き出し、その先には昔のイギリス紳士の間で流行した立派なヒゲのようなミラーがぴんっとはり出していました。
頭の上には青いランプが三つ並んでいて、それを挟み込むようにシンメトリーに一つずつ小さな青いランプが付いていました。
四角い眼鏡みたいなフロントガラスがまじめくさっているようにも見えましたが、なかなかこれでも昔は街を走り回っていたという事でした。  その証拠に、あんまり走り回っていたものだから、おしりに付いているマフラーのあたりが、真っ黒くすすけてしまって、いくら洗っても落ちなくなってしまったそうです。
まぁ、そうは言ってももう『バスの店』なんて呼ばれているくらいですから、タイヤなんてパンクしてしまって潰れているし、足元は錆びも浮いてきたりしてぼろぼろはがれていたりもするのでした。
バスの階段を上がった正面にはアイスクリームの冷蔵庫が置いてあり、その上の棚には指輪の形なったキャンディーや、粉を溶かして作るジュースなど、ワクワクするような駄菓子が沢山置いてありました。
他にも石鹸や調味料や、トイレットペーパーなんかも置いてあって、近所の人はちょっと足りない物があればバスに買いにくるのでした。
それになんといっても子供の私の心をそそったのは、夕方になるとおじいさん達が集まっては、入って右奥にある木でできたカウンターの所で楽しそうにお酒を飲んでいた事です。その場所は大人だけに許された場所のように思えて、とても羨ましかったような覚えがあります。
今から話すお話は、そんなボンネットバスの店から聞いたお話です。
バスの話してくれた事をそのままみなさんにお話ししますから、もし仮に信じがたい事があっても、本当かウソかなんて、そんな事はバスにしかわからない事です。
プロフィール

りこ

  • Author:りこ
  • 12月24日生 山羊座のO型 高知県四万十市出身
    趣味の登山の話や日々考えた事やあった事なんかを、等身大で書き留めていく感じでやっていきたいと思います。
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