「沖屋信郎様、弁当代金16800円。オリンピック運営局、弁当課」
小さなメモ用紙に書かれた金額と名前。
兄に対する請求額を見て私は驚いた。
私達兄妹の今回の北京訪問の名目は、オリンピック公式応援団として中国に入る事。
もちろん、何もかもが作られた設定だ。
政府から任命されたスパイ計画を実行する為に偽名を使い、作られたプロフィールを記憶し、
その人物になりきり表面上はオリンピックにわき上がるこの北京で日本の選手の応援をしている。
団体の中に於いて目立つ事無く、地味に存在していなくてはいけない。
なのに、何だ、この弁当代にしては高すぎる請求額は。
何を食えばこんな値段になるんだ。
お兄ちゃんの馬鹿。
冷たい金属で縁取られた眼鏡の奥で、怪訝な表情を浮かべた弁当課の係員の視線に対して、私は平静を装い、兄が選手のお弁当と自分の分とを間違えて食べてしまった旨を伝えた。
こんな凡ミスはあってはならない事であったが、間の抜けた日本人という印象を与えたらしく、
怪我の功名といったところだろうか、苦笑いを浮かべて立ち去った係員はもう先ほどの怪しむような視線をこちらに向ける事は無かった。
しかし、どうでもいい事で目立ってしまったのは失策。
私達はノリ弁当を急いでかっ込み、お茶を飲み干し、バックヤードに潜り込んだ。
実のところ、何の情報を盗み出せばいいのかはまだ政府からも知らされていない。
中国国内に入るまでに機密が漏れる事を恐れる故の作戦である。
「とりあえず北京に行って〜、お弁当食べたらバックヤードに来てね。そしたら、青いチャイナ服の女の子が居るから、詳細はその子に聞いて。」
という指示が出ているだけである。
私達兄妹はすぐにサテン生地のチャイナ娘を見つける事が出来たが、勝手に想像していた17〜18歳の娘ではなく、実際は9〜10歳くらいの小さな女の子だった。
トルコブルーのチャイナに日本刀をしょった彼女はあまりにも目立ち過ぎていて、これはいかんだろうと思ったが、オリンピックの祭りの喧噪の中では誰も彼女を気にする者はおらず、私達は簡単に接触する事が出来た。
彼女から計画の一部始終を聞かされ、いよいよ本番に取りかかるべく、会場を抜け出ようとした時、
ふと、こちらを誰かが見ている事に気が付いた。
柱の影と、二階のカフェ、道路の向こう側、周りを囲むようにこちらを観察している。
というか、完全にバレてる。
私達は別行動を取る事にし、5時間後に例のガソリンスタンドで待ち合わせという約束を交わし、左右に分かれた。
私は会場の裏側に伸びている県道をすたすた歩いていたが、追っ手が付いて来る間合いを見計らって、道沿いの山に分け入った。
この山を囲むようにして県道は走っているので、直線で抜ければ時間の短縮にもなるし、追っ手をまく事もできると考えた。
足をかけるとぼろぼろと崩れる崖をよじ登り、粘土質のけもの道に足を滑らせながらしばらく行くと、ふと左下に県道ではない細い道が見えた。
このまま険しいけもの道を行くか、それとも
(密偵が平坦な道を歩くはずは無いだろう)と思っているはずの追っ手の心理の裏をかいて
下の平坦な道を行くか。。
迷う暇はない、私は裏をかいて下の道に降りる事にした。
すると、ネコじゃらしを手に、てくてく歩いて来る追っ手にばったり出くわした。
裏の裏をかかれちゃった。
追っ手の後ろにはお神輿を担いだフンドシ姿の男達がわっしょいわっしょいとやって来る。
お神輿の上には先ほどのチャイナ娘が乗っていた。
くそ、、チャイナ娘、、、二重スパイだったか。。。
チャイナ娘は目を血走らせ、神輿の上で不気味にゲラゲラ笑っている。
ふんどしが迫って来る。私は背を向けて走った。
チャイナ娘が笑いながら追いかけて来る。
背中の日本刀を抜いて私に飛びかかった。
鞘から抜かれた日本刀は、刃渡り10センチの果物ナイフ。
腰に差したもう一本は長身の刀なのに何故?
この娘、、、ナメやがって、、、、、、、ありがとう。
ナメられてしまったのを不幸中の幸いとし、チャイナ娘の繰り出す狂気の振りに一度も当たる事無くかすり傷一つ作らないまま、フンドシ軍団をまく事に成功した私は、
兄の事が心配になり、一先ず約束のガソリンスタンドへ向かった。
兄はスタンドの店員と一緒に室内でコーヒーを飲んでいた。
安心した私が兄に声をかけようと、スタンドの敷地に入った瞬間、
床がコンクリ作りではなく、沼地である事に気が付いた。
「お兄ちゃん、沼やん、お兄ちゃん、ここ、沼やん。」
兄は店員と話をしながら大きな口を開けて笑っている。
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comment
久々にでましたね、おもろ夢。
これを待ってたんだよ〜
感想もなにもありません。
ただただ面白くて満足!
2008/11/21 17:02 | あらない [ 編集 ]
ありがとうございます。
久しぶりにストーリー性のある夢を見たので、
書き留めておきました。
夢日記ファンのあらないさんの期待にそえて感無量です。>あらないさん
2008/11/23 13:49 | りこ [ 編集 ]
続きの夢を早く見てよ
2008/11/24 12:07 | ネットくん [ 編集 ]
これで終わりです。
そんな都合良く続きが見れたらいいですけどね。>ネットくん
2008/11/24 14:16 | りこ [ 編集 ]
はぁ〜〜〜
夢だったのね。
やっと納得。
2008/11/28 02:07 | ケンタ(美容家) [ 編集 ]
あ、カテゴリーで「夢日記」ってのがあるのよ。
面白い夢や不思議な夢を見た時はこうやって書いておくの。
気が触れた訳じゃないので安心してね〜。>ケンタ(美容家)さん
2008/11/30 11:16 | りこ [ 編集 ]
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